ビジネスシーンではさまざまな専門用語やトレンドが次々と生まれています。その中から今回取り上げるのは、デザイン思考という考え方です。“デザイン思考”と聞いてまず思い浮かぶのは、商品やパンフレットなどのデザインですね。ではそれがどうビジネスに関わってくるのでしょうか。
ここで一つ、皆さんに質問をしてみたいと思います。
デザイナーとアーティストの違いは何でしょうか?
残念ながら私は芸術には疎いので、ここでは友人のデザイナーの言葉を拝借してご紹介します。その方曰く、アーティストは自分の思い描いた世界を作品にしたり、自分の中から湧き出るイマジネーションを形にする人だそう。
一方デザイナーは、ユーザー目線で見やすい、使いやすいものを生み出す人なんだとか。今回のテーマである“デザイン思考”を理解するヒントがこの言葉に隠れているように思います。そう、デザイン思考はまさにユーザーのニーズをくみ取ったものの考え方をすることを指しているのです。
なぜ今、ビジネスにデザイン思考が必要なのか
デザイナーさんがデザインを進めるプロセスのように、つまり、ユーザーのニーズに立って物事を発想していくプロセスを経るデザイン思考という考えがビジネスの世界でも注目されるようになったのには下記のような理由があります。
マーケットの飽和
現代は多くのものであふれています。必要な機能や性能を持っている商品は山ほどあり、その中で他社と差別化したものやサービスを提供することは難しい状況です。だからこそ、“今ほんとうにユーザーがほしいものは何なのか” “ユーザーはどんな点に課題を感じているのか” といったユーザー目線での発想が欠かせないのです。
SNSの流行も含めた“共感”時代の到来
従来、ものやサービスはユーザーの手元に届いた段階で作り手の手を離れていっていました。しかし今は、SNSなどを利用し、多くの人が感想をシェアできる時代。ユーザー間での共感を得ることがプロダクトやプロジェクトの成功に直結します。
ユーザーを無視した進め方をしていてはどんな優れた商品やサービスでも、幅広く浸透していくことは難しいでしょう。この点においても、ユーザーファーストを掲げるデザイン思考が大切になってきます。
経営者・リーダー層こそ率先してデザイン思考を学ぼう
ここまで、デザイン思考についてお話してきましたが、ここからは少し実践を意識した話をしていきたいと思います。
“デザイン思考”の重要性は認識できた。
で、何をすればいいんだ?
という部分です。
デザイン思考は、あくまでも思考(=マインドセット)であり、実際にこのステップを踏んで、これをこうして、というような実践マニュアルがあるものではありません。だからこそ、社員一人ひとりの能力や理解力に頼るのではなく、組織として集中的にデザイン思考を学ぶ必要性があるのです。
企業がデザイン思考を取り入れる際、弊社ではまず、経営者・リーダー層の方からセミナーや研修を受講されることを推奨しています。それは、会社のトップあるいはそれに類する地位にいらっしゃる方から従来の発想を転換し、デザイン思考を企業風土の一つにしていくことが、組織全体をマインドセットしていく近道になるから。
上層から思考を浸透させることで、一つひとつの業務タスクレベルだけでなく、プロジェクトの進め方、ディスカッションの進め方といったプロセスの根幹部分にも新たな変化をもたらすことができるのです。
ちなみに余談ではありますが、新入社員研修などで若者と話をすると、SNS全盛期に育った世代だけあって、無意識にデザイン思考を習得できている人たちもいて、思わず“さすが、デジタルネイティブだなぁ”と感心してしまいます。
今後もますます浸透していくであろうデザイン思考。
皆さんも少しずつ仕事に取り入れてみてはいかがですか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。