普段、コンサルティングや研修の場で多くの経営者層・リーダー層の方たちとお話をさせていただきます。その中で必ずと言っていいほど出てくる話題は“社員が辞めてしまう”という離職に関するお悩みです。経営者側からすると、せっかくコストをかけて育てたのに……という気持ちももちろんあるでしょう。
では実際、日本の平均離職率はどうなっているのか、離職率を低下させる方法はあるのかを、今回のテーマとしたいと思います。
日本の平均離職率は?
厚生労働省が発表している雇用動向調査結果によると、2020年の日本の離職率は14.2%です。これは一般労働者とパートタイム労働者の平均値となるため、一般労働者だけで見てみると、離職率は10.7%と公表されています。10.7%を高いと感じるか、低いと感じるか。平均すると、約10人に1人が辞めていく計算ですので、企業側にとっては“高い”のかもしれません。
ただ、この数値はあくまでもすべての産業の平均ですので、業界によってはもっと離職率が高いところも当然ありますし、やむを得ない離職理由の人も含まれています。とはいえやはり、経営者の立場に立てば、突然の離職や、離職の連鎖は絶対に防ぎたいものです。ではなぜ、離職するのか。
離職の理由をきちんと把握できていますか?
前述したように、普段から多くの経営者層の方と離職者についてお話をさせていただきますが、正直に申し上げて、離職の理由をきちんと把握していない方がとても多い印象です。
何千人もいるような大企業ならまだしも、50名以下の規模の会社の経営者の方でも、「給料が安いの“かな”」「仕事が忙しすぎたの“かな”」と、あくまでも推測でお話される。これでは離職率を低下させる方法を考える土台にもたどり着きません。
会社を辞める理由には、夢を叶えたいといったポジティブかつ個人的なものもあれば、労働条件の悪さや職場環境に問題があるといった多くの社員が抱えている不満が発端になっているものもあります。後者であれば組織全体として改善ができるはず。
つまり、不満が何かを知ることこそ、離職率を低下させるための第一歩なのです。
離職につながる不満を拾うための場所作り
そういえば、日本の退職届の基本は「一身上の都合」ですね。実に便利な言葉ではありますが、これでは離職理由がさっぱり分かりません。ぜひとも、離職理由をしっかりと聞く場所を作りましょう。
・離職時の面談を行う
社員から退職の申し出があった際、面談の時間を設定し、退職したいと思った理由や会社への意見を聞くのも一つの方法でしょう。
商品を買うとアンケートがついていて、フィードバックが次の商品のアイデアにつながるのと同様、社員からのフィードバックは“ある意味で最もストレートな”意見。
人によっては“最後だから言いたい放題言ってやれ!”というタイプもいるようです。とはいえ、実際に離職時の面談の場でそれほど多くの本音を語ってくれる人はいないかもしれません。
・社内1on1で日常のヒアリングを心掛ける
普段なんのコミュニケーションもない相手からいきなり離職時に理由を求められても答えづらいのは当然。であれば、普段からいろいろな話をフランクにできる場を設けておくことが大切です。
その一つが社内での1on1になります。
退職希望の有無にかかわらず、日頃のちょっとした不満や悩みを聞く場があれば、小さなストレスの種は定期的に解消され、ある日突然の爆発を防ぐことにつながります。でも、会社の人にそんなに洗いざらしに話してくれるでしょうか。
・社外担任との1on1を実施する
日頃隣の席にいる上司に“あなたに言われたこの指示が納得できない……”と社内1on1の席で伝えるのは、かなり難しい。もちろんそれができるくらいの関係性を築けているということであれば万々歳なのですが、現実的にはレアなケースでしょう。
そこで検討したいのが、社外担任との1on1、つまり外部の専門家を使ってのヒアリングの実施です。これであれば、社内のことを少しくらい悪く言っても大丈夫という安心感もあります。
また、社内リソースに限りがある企業にとっては、社員教育にかかる負担を軽減できるというメリットも。このような場の蓄積が、企業と社員をつなぎ、離職率を低下させるきっかけになるのです。
今回は、日本の平均離職率と、私が考える離職率を低下させる方法についてお話させていただきました。約10人に1人が辞める時代だからこそ、辞めない社員が大きな宝になります。
企業側は長く働き、信頼ができる社員を育てていくことと同時に、社員に信頼され、貢献しようと思ってもらえるような関係を構築することを重視した企業活動を行っていくべき。それがこのVUCA時代をたくましく生き延びる企業に欠かせない要素なのです。
弊社では社員の離職に関するご相談や、1on1実施のご相談を受け付けております。ぜひお気軽にお問い合わせください。