高いモチベーションを維持するには
新しい年の始まりに“今年はこんなことにチャレンジしてみよう”という目標を立てる人がたくさんいます。この段階はモチベーションがとても高く、自分にはそれが“できる”と思っていますよね?
では去年のことを少し振り返ってみてください。年初に立てた目標は達成できましたか? できた人もいれば、できなかった人も、さらにそもそも何の目標だったかすら曖昧な人もいるかもしれません。人のモチベーションは必ず上下するものなので、一年間を通して継続的に高いモチベーションを維持し、目標達成を目指すことはとても難しいことなのです。
人がなにかにチャレンジする際、キーとなるものの一つに“自己効力感”と呼ばれるものがあります。この言葉はカナダの心理学者が1977年に提唱したもので、物事に取り組む際に、自分はそれに対処することができるという確信を持てる状況を示しています。自己効力感の高い人はポジティブで前向きに困難に立ち向かい、モチベーションを維持しながら、物事に対処していく一方、自己効力感の低い人は“自分には無理だな……”と悲観的に考えがちです。
昨今、多くの若者がこの自己効力感が低い状態だと言われています。厳しい就職活動を経て、ようやく内定をもらい、新入社員として働き始めたにも関わらず、すぐに仕事を辞めてしまったり、転職してしまったり。結果、多くの企業は離職率の高さに悩まされているのです。
経営者層からはこんな声をよく聞きます。
最近の新入社員はどうもやる気が感じられない
少しハードルの高い仕事を与えると、すぐに拒否反応を示す
せっかく新入社員教育をしても、多くが数年で辞めてしまう
自己効力感を高める4つの要素
これらの要因になっているものの一つが、自己効力感の低さなのです。では自己効力感はどうしたら高めることができるのでしょうか。
自己効力感の提唱者はその構成要素を4つ示しています。
・制御体験
・代理経験
・言語的説得
・生理的情緒的状態
制御体験 = 勝ちパターン
一つ目の“制御体験”は、自分の過去の経験をもとに、勝ちパターンを身に着けること。成功体験を積み重ねることで、自分にも“できる”という確信を高めていけば、自己効力感は高くなります。入社したばかりの新入社員は当然、経験がなく、毎日新しいことを覚えていく日々。一つずつ自分で実践し、習得していくことこそ“制御体験”になり、“自分にできる”という自己効力感につながっていくのです。
代理経験 = 自分にもできる
二つ目は“代理経験”。これは読んで字のごとく、他者の経験から“自分にもできる”と感じることを指しています。新入社員にとって一番の代理経験は、同じ会社で働く先輩たちですね。かつて同じことを先輩たちがしてきている場合、その経験を聞き、自分の場合に置き換えてイメージをつかむことで、自己効力感を高めることができます。
言語的説得 = 周囲からの応援
三つ目の“言語的説得”は、一言で言えば、周りの励ましや応援です。“制御体験”や“代理経験”は新入社員が自分の努力で手に入れることができるものであることに対して、“言語的説得”は周囲の人が積極的に実践しなければ手に入りにくいものになります。“あなたならできるよ” “よくがんばっているね”といった声掛けができている職場環境であれば、新入社員は自己効力感を維持することができるのです。
生理的情緒的状態 = 感情のコントロール
四つ目は“生理的情緒的状態”で、要するに、感情の上下ということ。これは人間ですので、やむをえません。調子の良い時もあれば、ネガティブになってしまう時もあります。うまくコントロールができるよう、努力するしかありませんね。
この4つの要素が自己効力感を高めるキーになります。
新入社員との仕事観の違いや職場の離職率の高さに悩んでいる経営者の方にはぜひ、この4つの要素を改めて意識していただきたいのです。
では実際、どんな風に実践すればよいのか、どうやって新入社員の自己効力感を高めていけばいいのか。それを知る一つの方法に、人材教育のプロが指導するセミナーやコンサルティングがあります。これは新入社員本人が受講するものもあれば、経営者層やマネジメントする側が受講するものもあり、本人の自己効力感の高め方を学ぶだけでなく、相手の自己効力感を高める方法を知る場にもなります。
また、人材教育のプロはさまざまな企業や組織の過去の実践、経験を見てきているので、受講者にとっての“代理経験”にもつながる場です。セミナーやコンサルティングと聞くと大掛かりな感じがして足が遠のくという方もいるかもしれませんが、“人材育成のなんでも相談屋”のような気持ちで、気軽にお声がけください。
アフターコロナ時代の働き方など、2021年も職場と人とのつながりはさまざまな変化を生み出していくでしょう。しかし、どんな時代であれ、企業にとって人材が宝であることに変わりはありません。長期的スパンでモチベーションを高く維持できる人材を育てるためにも、“自己効力感”をキーワードに新たな教育方法を模索してみませんか。