新しい商品を開発してくださいと言われた時、あなたはまずどんなことを考えますか?
過去にヒットした同ジャンルの商品の洗い出し、現在の商品の不満点のヒアリングなど、アプローチの仕方はさまざまです。今回は新たなアイデアを生むアプローチの一つであるゼロベース思考について取り上げたいと思います。
ゼロベース思考とは?
ゼロベース思考とは、土台(ベース)となるものをゼロにして考える手法です。土台にあたるものとして、これまでの経験や過去の実績、既存のルールや枠組みがあります。これらをゼロの状況にして、目の前の課題を考えていくのが、ゼロベース思考の基本的なやり方です。
先ほど例に出した新しい商品の開発をもう一度考えてみましょう。
・過去にヒットした商品はどんな点が評価されたのか?
・コストに見合った商品でなければいけない
・市場のトレンドに方向性を合わせないとヒットしないのでは?
・現状の社内リソースでは開発できないのではないか?
多くの人は上記のような考えを前提に、アイデアを生み出そうとします。しかし、このような固定概念がある状態では、どうしても“突飛な”アイデアは生まれにくいものです。
ゼロベース思考の場合、上述した考えを以下のようにとらえます。
・今、ユーザがほしい商品はどんなものなのか?
・一旦、コストは考えずに、商品だけに目を向けよう
・今のトレンドは追わず、新しい商品がトレンドになるようにしよう
・リソースは気にしない。不可能だと思わず、“できる”ことを前提に考えよう
ゼロベース思考の特徴の一つは、ユーザ・顧客ファーストの視点を取り入れること。新しいアイデアをと言われると、多くの人は会社の方向性や予算、時間などが頭によぎってしまいます。あえてそれらをすべて放り出し、“ユーザは本当は何がほしいのか”を突き詰めていくのです。
それでは過去の経験を用いたアイデア出しが無駄なことかというと、もちろんそんなことはありません。過去の経験則に基づいたアプローチはトレンド思考と呼ばれており、こちらはこちらで、マーケティング分野などで幅広く活用されています。ゼロベース思考、トレンド思考とも、あくまでも複数あるアプローチの一つなのです。
経営者こそ、ゼロベース思考を取り入れるべき理由
ではなぜ今回、経営者の方にこそゼロベース思考を取り入れていただきたいと考えているのかをお話させていただきます。
仕事柄、多くの経営者の方とお会いし、貴重な経験のお話をたくさんうかがってきました。おうかがいするお話はどれも、私自身が物事を考える上でとても参考になるものばかりです。しかし一方で、こんなことをおっしゃる経営者の方もいます。
“以前は経験値で乗り越えられることが多かった。しかし今は、コロナ禍も含め、これまでの経験では予測できないようなことばかりだ”。
たしかに、現代はVUCA時代と呼ばれ、これまでとは異なる世界の変化に対応していかなければいけません。
だからこそ、会社を動かしていく経営者の方にはぜひ、ゼロベース思考を意識したアプローチをご検討いただきたいのです。十分な経験値を生かしたトレンド思考に、創造性豊かなゼロベース思考が組み合わさった時、物事へのアプローチに一層の深みが生まれてくるのではないでしょうか。
今回はゼロベース思考について、そして経営者の方にゼロベース思考を取り入れていただきたい理由をお伝えしました。ますます多様化、複雑化していく社会の中で生き残っていくためにも、ぜひゼロベース思考を取り入れてみてください。