日本は超高齢化社会だといわれています。高齢者が増えれば当然生まれるのが介護に関する問題です。
一方、晩婚化や少子化、核家族化といった問題もすでに長年にわたって、日本の社会問題になっています。これらの要因で、親世代の介護と育児の時期が重なってしまう人も増加。
そのような介護と育児が重なる状況を“ダブルケア”と呼びます。
今回はダブルケアを、企業視点で考えてみたいと思います。
ダブルケアとは?
ダブルケアとは、介護と育児が同時期に発生した状況を指す言葉です。言葉自体は知らなくても、身近にそのような状況下にある人がいるという方も多いのではないでしょうか。ダブルケアの要因は高齢化、晩婚化、少子化、核家族化などさまざまです。
元々長期的な視野が必要な育児に加え、介護は先の見えない状況が続くため、心身のバランスを崩してしまったり、時間的なゆとりがなくなるため、職を手放した結果、金銭的な負担も増加してしまったりと、ダブルケアを行う方には精神的、肉体的に大きな負担がかかることになります。
ダブルケアが企業に与える影響
では、ダブルケアは企業にも何か影響をもたらすものなのでしょうか。答えはイエスです。2016年に内閣府男女共同参画局が発表した「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」によると、ダブルケアを行っている人は30代から40代と、企業にとって最も戦力となるであろう中堅社員の年代に当たります。
また、同調査では、業務量や労働時間を減らした人が男性で約2割、女性では約4割となっており、そのうち離職して無職になった人は男性で2.6%,女性で17.5%という報告も出ています。つまり、ダブルケアは社員の働き方に大きな影響を与え、かつ企業にとっても大切な人材を失うかもしれない危機につながりかねないものなのです。
ダブルケアによる人材流出を防ぐために企業ができること
30代から40代、企業の主力となる中堅社員をダブルケアで流出させないために、企業側が取り組めることとして、下記が考えられます。
働き方の改善
ダブルケアを行っている人向けのフレックス制度や時短勤務の導入、在宅勤務の推奨といった働き方改革は企業側が率先して取り組むことができる支援体制作りの一つです。また、残業時間の削減といった改善も行いましょう。こちらは個人単位ではなく、社全体として取り組むべき課題でもあるので、経営者やリーダー層も率先して目を向けていく必要があります。
相談窓口や保育所の整備
ハラスメントなどの相談窓口を設ける企業も増えてきましたが、ダブルケアに関しても同様に、社員が気軽に相談できるような場所を作ることが大切です。また、企業規模によっては、保育所の整備ができると、なお良いでしょう。保育所の入所が難しく、離職をせざるを得ない子育て世代にとっても、企業側からこのようなサポートがあることは大きなメリットになります。
ワークライフバランス、タイムマネジメント研修の導入
ダブルケア向けの支援というと、当人とその周辺だけのことを考えがちですが、今後、ダブルケアも含め、多様な働き方が推奨されていく世間の流れを加味すると、企業として、社員たちのワークライフバランスやタイムマネジメントそのものを再検証する場を設けるという方法も考えられます。
弊社でもここ数年、このような研修をさせていただく機会が増えています。働き方に対する意識改革は今後、企業が率先して取り組むべき課題の一つでもあります。
今回はダブルケアが企業に与える影響についてお話しました。社員は企業の宝であり、財産です。ダブルケアを理由に貴重な人材が流出してしまうことを防ぐためにも、企業としてできる一手を常に考えておきたいですね。