中小企業でも対応が必要―パワハラ防止法とは

2022年4月から中小企業にも改正法が施行されたパワハラ防止法。

北宏志

企業側にもパワハラ防止のための顧客管理上の措置が義務付けられているこの法律について、改めておさらいしておきましょう。

目次

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法は正式名称を改正労働施策総合推進法と言い、2019年5月に成立、2020年から大企業に対して、2022年4月からは中小企業に対しても施行されています。改正法の施行にあたり、パワハラの指針が示され、パワハラの定義についても明確化されました。

パワハラの3つの定義

パワハラの定義として、パワハラ防止法では次の3つを挙げています。

① 優先的な関係を背景とした言動

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

③ 労働者の就業環境が害されるもの

1つずつその内容を確認していきましょう。

「優先的な関係を背景とした言動」とは、当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指しています。具体的には、職務上の地位が上位の者による言動や、同僚または部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるものなどが示されています。ここで注意が必要なのが、上司や同僚だけでなく、部下から上司への言動もパワハラに当たる可能性があるという点です。パワハラと聞くと、上司から部下へのハラスメントというイメージを持ちがちですが、今回の定義は、部下からのパワハラにも言及しています。

「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、またはその態様が相当でないものを指しています。具体的には、業務上必要な注意ではなく、関連性のない事柄において過去のミスを執拗に指摘したり、その人の人格を否定したりするような言動が該当します。

「労働者の就業環境が害されるもの」とは、当該言動により労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指しています。さらに「この判断に当たっては、『平均的な労働者の感じ方』、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当」であることも示されています。つまり、1人の人がパワハラだと感じるものではなく、多くの人がそう感じるレベルかどうかということですね。

パワハラ防止法で示されているパワハラの類型

パワハラ防止法には、具体的なパワハラの例も示されています。

身体的な攻撃 ― 暴行・傷害

精神的な攻撃 ― 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

人間関係からの切り離し ― 隔離・仲間外し・無視

過大な要求 ― 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

過小な要求 ― 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

個の侵害 ― 私的なことに過度に立ち入ること

身体的な攻撃や精神的な攻撃といった言動に加えて、「過小な要求」という類型が挙げられています。簡単に言うと「仕事をさせない」ことがパワハラに該当する可能性があるということ。この点もきちんと把握しておきましょう。

企業がとるべき対応

では、今回の改正法施行にあたり、企業側ではどのような対応が必要になったのでしょうか。パワハラ防止法では、企業がとるべき対応についても言及されています。それが以下の5つです。

① 事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること

② 相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること

③ 相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者及び行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること

④ 相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

⑤ 業務体制の整備など、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために必要な措置を講ずること

これらの措置は、業種・規模に関わらず、すべての事業主に義務付けられています(実施が「望ましい」とされているものを除く)。現状では実施していない場合の罰則などはありません。しかし万一社内でパワハラが発生した場合、企業イメージの失墜といった大きな影響を受ける可能性が高いため、できるだけ迅速に体制を整備しておきましょう。

今回は、2022年4月から中小企業に対しても施行されたパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)について改めてご紹介しました。ハラスメントに対する社会の目はますます厳しくなっています。弊社ではハラスメントに対する知識をアップデートするハラスメント研修や講習も実施しておりますので、お気軽にお声がけください。

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