部下の指導に悩んでいるリーダーへ、今すぐ実践できる指示の出し方を伝授します

普段、さまざまな企業のリーダーとお話をさせていただく機会があります。
その中で一番と言ってもよいほど頻繁に話題に上るのが、社員への教育についてです。

“今どきの若者”と呼ばれることの多い社員たちは「少し指導をすると辞めてしまう」「仕事のやり方がなっていない」など、リーダーにとって悩みの種になっています。

また、企業に勤める新入社員や若手社員と1on1を通じて話をする機会も多数あります。
こちらはこちらで、「上司の言っていることの意味が分からない」「言われた通りやっているのに怒られる」といった不満を抱えている人がほとんどです。

北宏志

ではなぜ、このような関係性になってしまっているのでしょうか。

今回は、私が実際に耳にした体験談も交え、リーダーと新入・若手社員のコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

目次

伝えている“つもり”が招くミスコミュニケーション

大手企業に勤めるAさんは、部下の仕事が遅いことに不満を感じています。
「月曜までに提出するように」と言ったのに、部下は月曜日の定時前に資料を提出してきたというのです。
「普通、月曜と言われたら、前の週の木曜くらいには私に見せるものでしょう」。
たしかに、一理あります。
でも、言葉通り受け止めると、Aさんは月曜を提出締め切りとして明示していますし、部下はそれを守って、きちんと提出しているのですから、問題はないように思えます。

このコミュニケーションをもう少し分解してみましょう。
Aさんの発想はこうです。

月曜日には完成形の資料を提出したい

→ 部下が一度で完璧な資料を提出することは難しいだろう

→ であれば、修正する時間も加味して、おおよそ前週の木曜くらいには資料を見せるべきだ

→ 部下もそれくらいのことは分かっているだろう

→部下には「月曜までに提出するように」と伝えよう

結果として、部下にはAさんの“分かっているだろう”の部分が全く伝わっておらず、言われた通り、月曜日に資料を提出してきたというわけです。

もしも最初の段階で、「月曜には完成形の資料を提出したい」、あるいは「修正の時間がかかることも加味して提出してほしい」といった適切な指示を出していれば、このようなミスコミュニケーションは発生しません。

指示を出される側の不満が積もると……

一方、地方の中堅企業に勤めるBさんは、リーダーとの関係に悩んでいます。

「上司からの指示が曖昧で、こちらで“汲み取る”ことに疲れました」。

その例として彼が挙げたのが
「火曜の会議の前までに資料を用意しておくように。内容は良い感じにまとめておいてくれれば良いから」という言葉です。

“良い感じ”とは、どんな感じでしょうか?

部下の主観に任せておきながら、判断は上司の主観でなされるという、最も“理不尽”なパターンですね。

Bさんはとても気遣いができる人なので、上司が思う“良い感じ”を想像し、精一杯資料を作ります。

万が一“良い感じ”が外れた時のことを考え、資料は前週の金曜に提出することにしているそうです。

しかし、これを毎週繰り返していては、Bさんが疲弊するのは明らか。
不満が蓄積し、私との1on1では「会社を辞めたい」という話も出てしまいました。

具体的な指示出しとプロセスの共有がカギ

では、AさんやBさんの事例を踏まえ、どのような指示を出すことが正しいコミュニケーションにつながるのかを考えていきましょう。

今回は仮に、金曜日の会議に使う資料を作成する場合を想定します。
考えられるプロセスは以下の通りです。

  1. リーダーから部下に資料作成を依頼する
  2. 部下が資料を作成する
  3. 部下が資料を提出、リーダーが内容を確認、修正がある場合、部下に伝える
  4. 部下が資料を修正する
  5. 部下が資料を再提出、リーダーが内容を確認する
  6. リーダーあるいは部下が会議用資料を当該部署や関係者に配布・送付する
北宏志

皆さん、自分が部下の立場、リーダーの立場だったら、それぞれどれ位の時間、日数が必要か考えてみてください。

資料を作るのは得意だから2時間で済むけども、自分の上司は外出も多く、確認には時間がかかるなという人もいるでしょう。

あるいは、部下は資料の詰めが甘いから、確認を早く済ませたとしても、修正には2日ほど見込んだほうが良いなという人もいるかもしれません。

おそらく、時間、日数とも皆さんバラバラの見積もりになるかと思いますし、それが当然です。

だからこそ、部下であれ、リーダーであれ、きちんとお互いの考えやプロセスに対する認識をきちんとすり合わせる必要があります。

資料作りの指示出しで私が重要だと考えているのは、以下のポイントです。

・提出期限=完成期限なのか、提出期限=初回提出期限なのかを明確にする
修正が必要な可能性があることを伝え、それを見越した提出期限を設定する
・期限の設定は、何日の何時までと、明確に指定する
・上記を踏まえ、部下にTODOリストを作らせる
・TODOリストに基づき、資料作成に必要な所要時間を予想させる
・TODOリストと所要時間に、リーダーのスケジュールを組み込ませる

このプロセスを踏んだ指示出しを行うことで、リーダーと部下のミスコミュニケーションを格段に減らすことができるでしょう。

リーダーの発する「金曜までに提出するように」には、本来、多くの要素が隠れていますが、それを部下に“察しろ”というのは無理があります。

特に、経験の少ない新入社員や若手社員には曖昧な指示が大きな負担になり、やがてその負担が不満に変わっていくのです。

リーダー側はそのことをよく理解し、的確で明解な指示を出すことを心掛けましょう。

もちろん、毎回このプロセスを説明するということではありません。

初回あるいは初めの数回、適切な指示を出せば、新入・若手社員であれ、プロセス全体を理解することができるので、やがては「金曜までに提出するように」だけでもスムーズに業務を進めることができるようになります。

新入・若手社員は学んでいないだけであって、できないわけではないのです。

だからこそ、きちんと教えることが大切だと、私は考えています。

今回は、私が実際に伺った話を基に、正しい指示の出し方、リーダーと新入・若手社員のコミュニケーションについてお伝えしました。少しでも皆さまの業務の参考になれば幸いです。

新入社員研修や若手社員のモチベーションアップなど、御社のご要望にあった企業研修をご提案いたします。お気軽にご相談ください。

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